befriend 医療のミライを、トモに。

学び、広がり、つながる情報サイト

職業辞典 Profession Column

理学療法士が活躍できる分野は7つ!就職先や内容、魅力など詳しく解説

  • 理学療法士

日本は10万人の人口に対して理学療法士が約80人存在するというデータがあり、これは全世界で第3位に位置するほど、理学療法士が多い国と言われています。

飽和状態を懸念されている理学療法士の需要ですが、実は理学療法士はリハビリテーションを行う医療の現場や介護施設などの他にも、活躍できる意外な場所があります。

理学療法士の活躍できる分野と、意外と知られていない新しい可能性をご紹介します。

理学療法士は国家資格

理学療法士は国家試験を受験し、合格することで取得できる国家資格です。

国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣指定の以下の養成校で3年以上学び、必要な知識を得て臨床実習を積む必要があります。

  • 4年制大学
  • 短期大学(3年制)
  • 3年以上の専門学校などの養成校
  • 特別支援学校

合格率は80%前後で、数字だけ見ればそれほど難しくない印象ですが、3年以上の専門学科の他に、120時間の臨床実習を乗り越えて受験に臨むのは、そう簡単ではありません。

そんな国家試験を突破した理学療法士は今、飽和状態と言われていますが、高齢化が加速していく日本では、むしろこれから需要が高まるであろうと予想されています。

理学療法士になるために学ぶ分野

理学療法士は医療分野の職種ですが、養成校に進学している学生さんを見ると、意外にも理系だけに偏っていないという特徴があります。

3年以上の理学療法士の養成期間中の最初の1年は、基礎分野を学んでベースを作ります。

その中でも、人と関わる能力を身に付けるコミュニケーション学や、患者さんに寄り添うための心理学、理学療法の法的定義などを学ぶ法学などは、文系の学生さんにとっては得意分野と言えるかもしれません。

他には経済学や統計学、理系の得意分野である生化学や体育学、そして一般常識としては英語など、理学療法士になる為には意外と幅広い知識が必要なのだということが、この基礎分野で分かります。

2年次以降は専門基礎科目として、解剖生理学や運動学、生理学など、他にも沢山の科目となる、理学療法士として必要な医学的基礎知識を学びます。

また、専門科目としては基礎理学療法学や理学療法評価学、理学療法治療学など、基礎知識だけでなく技術も習得し、また、地域社会で理学療法士として貢献するために役立つ地域理学療法学なども学習します。

3年次や4年次は評価実習や臨床実習を、実際の医療現場に入って行います。

120時間という長い時間、実際に患者さんとのコミュニケーションを取りながら実習を行うという重要な年次となります。

このように理学療法士は、医学的知識の他に患者さんと関わる上で必要となる心理学的知識など、幅広い分野から学びを得て初めて就ける職業なのです。

理学療法士が活躍する分野別の就職先と仕事内容

それでは、理学療法士が活躍する具体的な職場と仕事内容を分野別に挙げていきます。

医療機関

理学療法士の大体8割が勤務しているのが、医療機関です。

理学療法士の病院での仕事と言えば、整形外科などで受ける痛みの緩和やマッサージ、身体機能回復のための運動療法や、温熱療法や電気治療などの物理療法などが、一般的に知られている理学療法士の施術でしょう。

しかし病気やケガなどでの障がいや機能低下に繋がるきっかけになる急性期から、余命を過ごす終末期まで、患者さんにとっての重要な節目に、理学療法士が必要とされる場面があります。

例えば集中治療室に入院になった際、一般的に見て重篤と思われる状態の患者さんでも可能な、かつ必要なリハビリを、他職種の担当とコミュニケ―ションを取りながら適切に進めていくという大事な役割を担います。

退院後の維持期には入院前となるべく変わらず生活できるよう、そしてさらに生きがいや楽しみのある生活を送れるように支援しながら、少しずつ回復していく経過を患者さんと共有します。

また、がんなどの病気が原因の痛みや苦しみを前にした終末期の患者さんを、緩和ケアにより少しでも苦痛を軽減し、最期まで自立した生活を送れるようリハビリでサポートすることが、QOL(「quality of life」生活の質)を出来るだけ下げずに済むことに繋がります。

症状によっては入院以降の長い人生を通してサポートすることになるとも言えるのが、医療機関での理学療法士の仕事です。

入所・通所施設

高齢化社会になくてはならない、老人ホームやデイケアサービスには、必ずと言っていいほど理学療法士がいます。

入所や通所している高齢者が、なるべく自立した生活を続けていけるように、立つ・歩く・座るなど、基本的な運動機能を維持し、低下を防ぐ狙いで行われます。

施設で過ごす際に利用できる運動器具の選定や、利用者さんの自宅を訪問し状況を把握するのも理学療法士の仕事です。

利用者さんの自宅の環境を知ることは、その自宅で何ができるようになりたいか、今の状態で帰宅したらどんな設備が必要になるかなど、リハビリ計画を立てる上で様々な判断をするための重要な情報となります。

また、一緒に生活するご家族が安心できるよう注意点を説明したり、在宅生活に必要な福祉用具の設置を紹介したりするのも、理学療法士の役目です。

福祉施設

障がい者施設などの福祉施設には、自宅で生活することが難しい、介護や援助が必要な障がい者の方が入所されています。

身体障がいだけでなく、知的障がい・発達障がいなど、様々な対象者がいますが、医療機関の患者さんに比べて移動・排泄・食事・入浴などの日常動作が急に衰えるなど、大きく変化する心配があまりない為、現状維持やそれ以上を目指し、リハビリなどのサポートを行います。

装具などを利用することで日常動作がより向上するケースもあるため、リハビリをして様子を見ながら適切な装具を選定するのも、理学療法士の役割です。

寝たきりの利用者さんに対してはなるべく離床時間が長くなるよう、車椅子への乗車訓練の指導をしたり、痛みや麻痺などがある利用者さんに対しては、緩和のための運動療法や物理療法などを提供したりと、個別に状態を見て計画を立てることになります。

また、床ずれ予防や誤嚥性(食道へ入るべきものが気管に入ってしまうこと)肺炎予防の為の体位交換など、他職種と協力し合いながらその施設で求められている役割をこなす場面も少なくありません。

行政機関

行政機関の分野とは、分かりやすく言うと公務員のことですが、行政における理学療法士の求人はとても少ないのが現状です。

具体的には、以下のような職場があります。

  • 国や都道府県・市町村
  • 社会福祉協議会・身体障がい者福祉協議会
  • 保健所・市町村保健センター
  • 地域包括支援センター(市町村直営)

自治体などで介護福祉課や健康企画課等に配属されたり、公共の場で講師や体操指導を行ったりと、地域に密着した福祉活動を行います。

理学療法士として雇用されると、行政のルールに縛られる場面が多いので少々わずらわしさを感じますが、公務員なだけあって、収入は多少高額になり安定も得られます。

教育・研究機関

理学療法士が教育機関や研究の分野で活躍するケースもあります。

理学療法士の資格を取得するには、上述にもある通り、文部科学大臣が指定した大学や短期大学・専門学校などの養成機関で3年以上学ぶ必要があります。

大学教員を目指すためには決められた学歴が必要となりますが、理学療法士を育てる養成校で教える側に立つ理学療法士も数多くいます。

また、目覚ましい進歩を遂げる医療技術の中で、最適な理学療法を極めるために、大学院や研究機関に所属して、より専門性を高める理学療法士もいます。

次世代の理学療法を世に送り出すのもまた、理学療法士の仕事ということでしょう。

企業

理学療法士が一般企業やメーカーに就職するケースはそんなに多くありません。

一般企業が理学療法士の有資格者として募集を出すことが滅多にないのが理由ですが、理学療法士の知識が大きな役割を果たす可能性のある求人は確かにあります。

  • 医療・介護福祉器具メーカー
  • 介護・福祉支援事業
  • 住宅メーカー
  • スポーツメーカー
  • ベッドメーカー

医療や介護福祉・スポーツの場面で欠かすことのできない器具は様々ありますが、製品の取り扱い説明や、使用時におけるデータ収集、定期点検など、開発経過以外においても理学療法士の知識が活躍できる場があります。

最近では高齢者の在宅介護が推進されていて、それに対応した設備や住まいの需要が高まっているので、暮らしの中に理学療法士の視点を役立てられることが、一般企業メーカーで理学療法士が働く利点となります。

スポーツ事業

スポーツ業界でいわゆる「スポーツリハビリトレーナー」に就くにあたって、国家資格は必要ありません。

しかし、大手企業や組合の実業団チームやプロスポーツチーム、地域のスポーツクラブ、そして身近な処では一般の方が通うスポーツジムなど、身体の状態に気を配りながら指導を行う仕事です。

そういったスポーツの場で指導するとなると、掲げられる資格が一つもないのでは信頼を得ることがとても難しくなります。

理学療法士はリハビリのスペシャリストなので、スポーツ業界で働くうえで土台になる知識や技術は十分備わっていることになります。

しかし、どのスポーツのトレーナーになるかで専門性が変わってきますので、理学療法士の資格の他に、そのスポーツ独自の知識や必要な資格などを得ることで、その場によりふさわしいスポーツリハビリトレーナーになれるでしょう。

理学療法士の新しい可能性

理学療法士が関わる分野は上述のように幅広く、これからも需要が増え続ける職種であることは分かりましたが、では、これから先、他の分野にその活躍の場が広がることは考えられるのでしょうか?

実は理学療法士の仕事の一つである、プログラム作成やデータ解析・診断等は、この先AIが担っていくのではないかと言われています。

しかし、やはり人の手や判断が重要になる部分に関しては、理学療法士は無くてはならない存在です。

そう考えると、AIに任せられる仕事が増えれば、理学療法士は他のことに時間を割くことができるようになると考えられます。

本業と並行して、学ぶ時間を確保できるということは、理学療法士の新しい活躍の場を作っていくことが可能になるということです。

例えば、理学療法士は開業権を持っていませんが、理学療法の提供をせず、他の分野での資格を取得することで、専門知識を底上げし、全く違う分野での開業が可能になります。

シューフィッターや美容サロン、インテリアコーディネーターなど、人に関わる分野には必ず、理学療法士の医療や人体に関わる知識が役に立つでしょう。

まとめ

理学療法士が活躍できる分野を7つ、詳しく紹介しましたが、お目当ての分野は見つかったでしょうか?

一般的に身体が不自由だったり、病気やケガで病院にかかったりする際にお世話になる印象が強い理学療法士ですが、実は健康な人に指導したり、製品や環境づくりを開発したりと、知られている以上に幅広い活躍が可能な仕事だということが分かっていただけたかと思います。

まだまだ人に役立てる形を模索できそうな理学療法士ですが、その資格を足掛かりに、新しい分野を開拓し、活躍するのはあなたかもしれません。

日本保健医療大学は、高度な専門性と総合的な視野を持った、創造性・指導性を発揮できる人材を育成するため、丁寧な教育と学生指導にあたっています。

最新の医療技術が学べる教育環境をご用意しておりますので、まずはオープンキャンパスやHPで、学校や学生の雰囲気を見てみてはいかがでしょうか。

「理学療法士になったら、もしかしたらこんなこともできるかな?」と新しいことを考えているあなたも、ぜひお気軽に日本保健医療大学まで、お問合せください。