柔道整復師と理学療法士の違いとは?仕事内容や資格の取り方など徹底比較
- 理学療法士
柔道整復師と理学療法士、どちらも聞いたことがある職種だと思いますが、この2つの職種、どんな風に違うのか、ご存じですか?
なんとなく、どちらもケガをした時にお世話になる仕事なのでは?と思っている人は多いと思いますが、その通り、確かに似ているところはいくつかあります。
しかしその仕事内容を聞くと、実は全くと言っていいほどの違いもあるのです。
柔道整復師と理学療法士、この2つの職種が、それぞれどんな患者さんにどんな風に必要な仕事なのか、どうすればなれるのかなど、説明しながら比較してみましょう。
目次
柔道整復師とは
柔道整復師とは、骨や関節・筋や健・靭帯などの、明らかな外傷性による、骨折や捻挫・脱臼・打撲・挫傷などのケガに対して、手術や投薬などではなく、人間が本来持っている自然治癒能力を最大限に発揮させる施術によって治療する仕事です。
以下は、そんな柔道整復師が行うことができる治療法です。
整復法 | 骨折したり脱臼したりした箇所を元の状態に戻す。 「ほねつぎ」などと呼ばれている。 |
固定法 | 安静にするべき患部を金属副子(そえこ)や包帯等を使って固定する。 包帯の巻き方ひとつで患部の回復が早くなるとまで言われている。 |
物理療法 | 治療低周波・超音波・電気療法や温熱療法など様々な物理的エネルギーを用いた治療法の中から、患者さんの状態によって選択し、施術する。 ※理学療法も同様 |
手技療法 | 患部を直接揉んだりさすったりして、血流や新陳代謝を向上させ筋肉をほぐす。 軽擦(けいさつ)法・強擦(きょうさつ)法・揉捏(じゅうねつ)法・叩打(こうだ)法・圧迫法・振せん法などがある。 |
運動療法 | 手を貸したり医療器具によって働きかけたりして運動させ、機能回復を図る。 患者の年齢や体格、ケガの状態に合わせ、開始時期や適切な運動を選択する。 ※理学療法も同様 |
牽引法 | 患部を引っ張って治療する。 むちうちの為の頸椎牽引や腰痛に対しての腰椎牽引などがある。 |
柔道整復師が行う治療法は、胸倉を掴まれて投げ飛ばされたり、関節等を締め上げ動きを封じたりして闘う柔道が元で、関節が外れたり筋を痛めたり、捻挫や打撲などが絶えない競技の中、そういった患部を治療するためにできた「柔道整復術」です。
理学療法士とは
理学療法士とは、ケガや病気によって障がいを持つ、または障がいを持つと予想できる患者さんの、身体機能を回復または維持・向上を図るリハビリテーションを行う仕事です。
物理療法や運動療法については、柔道整復師と同様の部分がありますが、理学療法士が行う治療にはその他に、柔道整復師とはまた違う、治療のタイミングがあります。
急性期 | 病気の罹り始めや、容態が急に悪くなり手術にいたる時期のこと。 術前には手術に耐えうる体力をつける為の、手術直後には呼吸の為などの、様々なリハビリがある。 |
回復期 | 急性期を経て一定の回復を得て、次の段階の機能回復をしていく時期。 急性期から行っている基本動作の他に、自宅に戻ることを前提とした上での、生活に基づいた運動能力の回復に重きを置いたリハビリ期。 |
維持期 生活期 |
自宅等で生活を送っている上でのリハビリを進めていく時期。 生活の質の向上を目指す為、患者さんの状態や退院後の生活環境の把握が重要。 |
終末期 | 病気や老衰、障がいなどが原因とされる、死期に近づいている時期。 痛みを軽減する為のマッサージやリハビリ、必要な器具等の選定や、ご家族に対する介助指導など、幅広い役割を担う。 |
特に急性期については、医師などの他職種と連携を取りながら集中治療室で仕事をするチーム医療の一人として、患者さんの機能回復を担当するケースもあります。
そして終末期まで、患者さんの人生の中で長期間に渡って関わり、患者さんのサポートをしていくことになります。
柔道整復師と理学療法士の違い
このように、ちょっと似ていて違う柔道整復師と理学療法士ですが、次は働き方や資格の取り方の違いなどを見てみましょう。
どちらも国家資格
共通するのは、いずれも文部科学大臣もしくは厚生労働大臣が認定している養成学校で3年以上学び、卒業するという養成期間(理学療法士については、作業療法士の資格を持っている場合は2年)を経て、国家試験を受験し合格・資格を取得することです。
4年制大学や3年制の短期大学、専門学校も3~4年生など選択肢があり、必要なスキルを身に付けることになります。
カリキュラムとしては解剖学や生物学など共通の部分もありますが、その他にそれぞれに特化した内容を別に学ぶことになります。
国家試験合格率は、理学療法士はだいたい70〜90%、柔道整復師はもう少し低く60〜70%程度で、数字だけ見れば柔道整復師の方が難関に感じるかもしれません。
しかし、理学療法士は就学中に臨床実習があり、実習で合格しないと進級できません。
3週間の評価実習が1回、8週間という長期にわたる臨床実習が2回と、実際に職場として選ぶ可能性もある病院や老人ホームなどの現場での実習は、確かにいい経験になるでしょう。
しかし、資格をもって働くことの厳しさを目の当たりにするのは、資格試験に辿り着く前の試練として、合格率だけでは測れない難しさがあります。
そしてその難しさはいつしか、資格取得を経て理学療法士の仕事に就いて、患者さんと向き合いながら仕事をしていく中で、少しずつやりがいに代わっていくものと言えるでしょう。
柔道整復師は独立開業が認められている
柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷のケガについて、医師の指示を受けなくても応急処置のみ治療行為が認められている、唯一の職業であり、担当できる業務の幅が広いく、独立開業の道を選択することも可能です。
定年退職を気にする必要がなく、将来的に長く勤められます。
勿論、整骨院や整形外科、介護施設、スポーツトレーナーなど、一般企業や医療機関等に就職することも選択肢として十分あります。
理学療法士は治療の理由を選ばない
病気・ケガ・高齢など、身体機能低下の理由を問わず、幅広く対応できるのが、理学療法士の特徴です。
柔道整復師と違い、理学療法士は医師の指示なしには治療を行うことができませんが、医師に全体的な指示を受けた後は、特別な理由がない限りは、治療の都度具体的な指示を受けることを必ずしも必要としません。
そして、患者さんの状態を把握した上で、患者さんの要望を聞き、触診などを行ない、医師が薬を処方するのと同じように、リハビリテーションの計画を立てます。
患者さんの人生の中で、容態の悪い急性期から終末期まで、長期にわたりサポートをすることになるのも、理学療法士の大きな特徴です。
その他にも、例えば病院に就職すると、上記にもある通り、チーム医療の一端を担うというケースもあります。
医師や他職種の担当から多くの情報を得て、それを元に綿密かつ具体的なリハビリを計画するという仕事は、患者さんの目まぐるしい回復を目の当たりにする機会になり、やりがいのある仕事となるでしょう。
柔道整復師と理学療法士、どちらを選ぶ?
柔道整復師と理学療法士の、仕事内容ややりがいの違いを比較してみましたが、他に選択の決め手となるどんな違いがあるのかを見てみましょう。
ダブルライセンスを取る人も
開業を目指したい理学療法士が、後から柔道整復師の資格を取得するケースがあります。
しかし、理学療法士の資格を持っているからと言って、免除になるカリキュラムがある訳ではないので、重複で学ぶ学科があったとしても、全て一から学ぶことになります。
他にも、これは理学療法士と柔道整復師に限ったことではありませんが、ダブルライセンスだからといって診療報酬に反映されることはほとんどなく、雇用される際も、両方の役職としてではなくどちらか一つの資格で雇用されますので、資格手当等も重複することはまずありません。
それでも様々な方向から考えて、自分の働き方や将来などの希望に沿うようであれば、柔道整復師と理学療法士のダブルライセンスは大きなスキルアップに繋がります。
患者さんとの関係における柔道整復師と理学療法士
独立開業ができる柔道整復師は、患部の様子など、医師を通す必要がないため、直接患者さんとコミュニケーションして治療方針を決めていける、患者さんとの距離の近さがメリットとなります。
ケガ直後からの回復は患者さんにとっても分かりやすい為、感謝されることが多いかと思います。
対して理学療法士は、患者さんの人生に関わる長い時間をかけた治療に関わることになります。
リハビリの結果はすぐに得られるものとは限らないので、時には心が折れてしまう患者さんもいる中、理学療法士として前向きな治療を心がけなければいけない時が多くあります。
しかし、少しずつ運動機能を回復していく患者さんに笑顔が戻っていく過程を、一緒に歩んでいけるということが理学療法士としてのやりがいを感じられる一番のポイントとなるでしょう。
柔道整復師と理学療法士のお給料の違い
仕事内容はどちらも魅力的で、資格取得の難易度もどちらも引けを取らない柔道整復師と理学療法士ですが、気になるのはお給料の差でしょう。
柔道整復師の給料は年間420万円強、理学療法士の給料は年間420万円弱と言われています。
どちらも同程度と思われる数字ですが、柔道整復師の独立など、どのような働き方を選ぶかで変わってきます。
これから高齢者がどんどん増えていく中で需要が伸びていくであろう理学療法士は、雇用で安定を図ることができます。
独立開業を狙える柔道整復師は、経営が波に乗るまでは大変だと思いますが、安定すれば高収入も期待できます。
自身の働き方の希望とよく照らし合わせて選びましょう。
まとめ
柔道整復師と理学療法士の違いを徹底比較してみましたが、どちらがご自身に合っているのか、どちらの仕事を目指したいのか、判断のための参考になりましたでしょうか?
高齢化社会が加速する中で、医療や介護の分野では柔道整復師と理学療法士は共に、地域や行政、他の医療システムと連携を必要とするなど、ますます重要な位置づけの職種となってきています。
日本保健医療大学では、基礎科目・専門科目共に基本が重要と考えた上で、時代に沿った深い知識も養うため、経験豊かな教員による理学療法士の人材育成を行っております。
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理学療法士を目指している方の他、柔道整復師とのダブルライセンスを考えている方も、ぜひお気軽に日本保健医療大学まで、お問合せください。