言語聴覚士になるための資格の取り方は?大学と専門学校の違いをわかりやすく解説
- 医療全般
言語、聴覚、発声などの機能を使いながら人間はコミュニケーションを取ります。しかし、これらの機能は病気や事故により損なわれることがあります。
言語聴覚士は話す、食べる、聞くに関するリハビリの専門職です。
言葉によるコミュニケーションの問題は脳卒中後の失語症や聴覚障害だけではなく、発達の遅れや発声の障害など多岐に渡るため、言語聴覚士は小児から高齢者まで幅広く援助を行います。
この記事では、1997年に国家資格になったばかりの言語聴覚士になるための資格の取り方、養成校で教えてもらえること、大学と専門学校の違いについて解説していきます。
言語聴覚士を目指している方、またはリハビリ専門職の資格を取りたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
言語聴覚士になるための資格の取り方
大前提として、言語聴覚士として働くためには国家資格である『言語聴覚資格』が必要です。この資格を持っていなければ言語聴覚士として働くことはできません。
言語聴覚資格は誰でも受験できる試験ではありません。受験資格を得るためには、必要な知識と技能の習得が義務付けられています。
具体的には以下の学校を卒業することで受験資格を得られます。
- 文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学か短大)
- 都道府県知事が指定する養成所(3~4年制の専修学校)
- 指定された大学・大学院・専攻科・専攻学校(2年制)
高等学校を卒業した後すぐか、一般の4年制の大学を卒業した後かで選択できる学校が変わります。
最短で言語聴覚士の資格を取れるルートは、高等学校を卒業した後に3年制の学校を卒業するという方法です。しかし、当然ながら4年制の学校よりも専門知識と実習経験は詰めませんので、しっかりと経験を積んでおきたいと考えている方は4年制の大学がおすすめです。
一般の4年制の大学を卒業した方であれば、2年制の指定された大学や大学院、専攻科や専攻学校を卒業することで受験資格を得られます。
他のリハビリ系の職種と同様に、言語聴覚士の受験資格を得るための学校では実習に重きを置いているという特徴があります。国家試験に向けての準備は最終学年の秋頃から始まります。
ちなみに、最近は通信教育のみで取れる資格が多くありますが言語聴覚士は取れません。前述したように文部科学大臣が指定した学校か、都道府県知事が指定する養成所に通学して卒業しなければ受験資格を得ることはできません。
言語聴覚士になるための試験について
前述した養成校の教育課程を得て卒業した後は、言語聴覚資格を得るための試験を受けて合格しなければ言語聴覚士にはなれません。
試験内容は計200問の筆記試験で、5つの選択肢の中から1つの正答を選ぶ形式です。厚生労働省が発表している合格率は以下のように推移しています。
- 2017年⇒75.9%
- 2018年⇒79.3%
- 2019年⇒68.9%
- 2020年⇒65.4%
- 2021年⇒69.4%
毎年新卒者の合格率が高く既卒者が低いという結果になっているため、試験を突破する鍵は養成校を卒業した後すぐに試験に挑戦するという点です。
前述したように、養成校では最終学年になると国家試験合格に向けた準備と対策が行われるので、その期間でしっかりと知識を蓄えておくようにしてください。
ちなみに、同じリハビリ専門職である理学療法士や作業療法士の合格率は例年80%前後で推移しています。それを踏まえると、言語聴覚士はリハビリ系の国家資格の中では難易度が高い部類であるといえます。
言語聴覚士の養成校で学ぶこと
前述したように、言語聴覚士になるためには養成校を卒業した後、言語聴覚資格という資格を取得しなければいけません。ここからは、受験資格を得るために通う養成校で学ぶことを紹介していきます。
座学
養成校により多少の違いはあるものの、言語聴覚士の養成校で学ぶ座学は基本的に基礎分野、専門基礎分野、専門分野の3つの分野で構成されています。
- 基礎分野⇒一般的な教養科目
- 専門基礎分野⇒基礎的な医学知識
- 専門分野⇒言語聴覚士としての専門的な学問
基礎的な医学知識では、一見すると言語聴覚士とは関係ないものまで学習します。しかし、専門性の高い科目を学習していくうちに、基礎の上にすべては成り立っていることを理解できます。
ちなみに、言語聴覚士国家試験受験に必要な単位数は93単位です。
前述したように言語聴覚士の養成校には2年制から4年制まで存在していますが、通う年数が短くでも単位数は同じです。そのため、養成校に通う年数が短い程、よりタイトな履修スケジュールを組まなければいけなくなります。
また、大学卒業者を対象としている2年制課程では基礎分野における単位を免除できる場合があります。養成校により異なりますので、気になる方は事前に調べておきましょう。
実習
言語聴覚士は、早ければカリキュラムの一部として1年目から実習が行われます。
座学で学んだ知識は実習により知識として定着していきます。座学はもちろん大切ですが、体に覚えこませるための実習は座学よりも重要な授業といっても過言ではありません。実習の目的は知識と技術を習得するためなので、貴重な時間であるということを認識しましょう。
細かいカリキュラムは養成校により異なりますが、基本的には3種類の実習があります。
- 見学実習
- 評価実習
- 総合実習
見学実習とは、言語聴覚士はもちろん関連職種の仕事の様子を見学する実習です。現場で実際に働いている方の技術を見ることで基本的な姿勢を学習できます。
評価実習とは、実際に入院している患者さんに対して検査、検査分析、訓練プログラムなどを作成する実習です。自分自身で指導・援助プログラムの立案を行います。
総合実習とは、言語聴覚士としての実践的なスキルを身に付けるための総合的な実習です。一連の業務を実施するものなので、将来的に役立つスキルを学習できます。
大学と専門学校の違いを解説
前述したように、言語聴覚士になるためには大学か専門学校を卒業しなければいけません。ここからは、大学と専門学校それぞれにどのようなメリットがあるかを詳しく解説していきます。
大学で言語聴覚士を目指すメリット
まず前提として知っておいてほしいのが、言語聴覚士を目指すための大学は日本全国に多くありますが、専門学校は数が少ないという点です。そのため、多くの方は高等学校を卒業してから大学へ通う、大学を卒業してから専攻学科へ通うなどして言語聴覚士を目指しています。
専門学校ではなく大学へ通い言語聴覚士を目指すメリットは以下の通りです。
- 大学卒業の学歴になる
- 言語聴覚士だけではなく幅広い知識を学ぶことができる
- 他業種への就職にも有利に働く
- 自分自身で興味がある科目を選択して時間割を作れる
専門学校では言語聴覚士に関する知識のみを学習しますが、大学はそうではありません。言語聴覚士だけではなく自分が興味のある科目を自由に選択できますので、幅広い知識を身に付けることが可能です。
また、卒業すると大卒の学歴を得ることができるため、一般企業への就職にも有利に働きます。時間割の組み方によっては、言語聴覚士に関する勉強だけではなく医療系資格の仕事がどのようなものなのかもわかりますし、そのための資格を取れる勉強もすることができます。
一般的に大学は4年制なので卒業までに長い年月がかかりますが、言語聴覚士だけではなく医療に関する幅広い知識を身に付けられ、言語聴覚士に関する知識もゆっくり確実に身に付けられるという大きなメリットがあります。
専門学校で言語聴覚士を目指すメリット
大学に比べれば数は少ないものの、専門学校を卒業して言語聴覚士を目指す方もいます。専門学校には大学とは違う以下のメリットがあります。
- 専門的な知識だけを集中して身に付けることができる
- 職業教育が中心なので言語聴覚士として必要な知識と技術を習得できる
- 大学よりも短期間で受験資格を得ることができる
専門学校では、大学よりも言語聴覚士になるための専門的な知識を学べます。
言語聴覚士になりたい人だけが通う学校なので、科目は言語聴覚士に必要な知識と実習体験のみ。大学の場合は一般教養を学ぶ時間がありますが、専門学校にはそれがありません。
また、学校により異なりますが専門学校は大学よりも少人数で授業を行うため、座学だけではなく実習もより集中した環境で臨めます。
国家試験に対する不安や不明点も気軽に先生に聞ける環境が整っているだけではなく、周りの生徒も言語聴覚士を目指しているため、自分自身のモチベーションを上げる環境だといえます。
2年制と3年制の違い
専門学校には2年制と3年制があります。2年制の入学対象は4年制の大学を卒業した方のみで、3年制は高卒でも大卒でも入学できます。
2年制の専門学校は大学を卒業した方のみが対象となりますので、授業のレベルは最初から非常に高いという特徴があります。国家試験の合格率も高いため、4年制の大学を卒業した後に言語聴覚士になりたいという方は2年制の専門学校へ進学することをおすすめします。
3年制の専門学校は高卒でも入学できますが、前述した4年制の大学へ進むよりも短い時間でより専門的な資格取得へ向けた勉強ができます。
絶対に言語聴覚士を目指すという固い意志がある方であれば、短い時間で集中して専門的な学習ができる専門学校がおすすめですが、大卒の学歴は得ることができませんので、しっかりと将来のことを考えながらどちらを選ぶべきか検討しましょう。
まとめ
言語聴覚士になるための資格の取り方、試験について、養成校で学ぶこと、大学と専門学校の違いを詳しく解説していきました。
リハビリ専門職の中では比較的新しい職業ですが、資格を取るための選択肢はさまざま。視野を広げるためには大学がおすすめですが、専門的な知識を早く学びたいと考えている方には専門学校がおすすめです。人により選択肢は異なりますので、しっかりと検討した後に選ぶべき道を決めましょう。
リハビリ系の国家資格の中では合格率の低い言語聴覚士ですが、しっかりと勉強すれば決して無理ではない試験です。自身の状況を踏まえたうえで、資格を取るための最善の選択肢を選びましょう。