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作業療法士になるには?適性や学校の種類・選び方を解説

  • 医療全般

作業療法士は、病気や怪我でリハビリテーションが必要な方々に寄り添い、心と体を支える職業です。

「障害をもっている家族がいたから」「親がリハビリテーションに携わる仕事をしていたから」「人の役に立つ仕事がしたいから」

など作業療法士になりたいと思うきっかけは人それぞれですが、社会の超高齢化が進行するとともに需要も高まり、病院や障害者施設などのほかにも活躍の場が広がっています。

作業療法士になりたいと思ったら、まずは専門知識と技術を学ぶ養成校で学び、必要単位を取得した後に国家試験を受験し合格する必要があります。

医療系の資格を取得できる学校といえば、少し前までは専門学校が主なルートでした。しかし1993年に広島大学にはじめての4年制の養成課程が設置されて以来、徐々に4年制大学や3年制短期大学の数も増え、学びの選択肢も広がっています。

この記事では、作業療法士になりたいと思っている方のために、作業療法士の詳細と適性、学校の種類や選び方などについてご紹介します。この記事を参考に、自分に最適な学校を見つけてみてください。

作業療法士とは

作業療法士とは、リハビリテーションに携わる専門職です。英語では「Occupational therapist」といい、日本では「OT」という略称で呼ばれることもあります。

リハビリテーションというと、運動機能を回復させる理学療法士という職業が思い浮かびますが、作業療法士も患者さんが「その人らしく生活する」ことに貢献する大切な職業です。

作業療法士の作業とは、食事や入浴、家事、仕事など人が行うすべての行動を指します。病気や怪我、精神的な問題、高齢など、なんらかの要因でそれらの作業に支障が出たときに、作業活動を通じて治療していきます。

以下は、作業療法士が行う具体的な作業療法の例です。

  • 基本的動作能力:準備運動を含む物理的感覚運動刺激、滑り台、ダンス、体操、軽いスポーツなど
  • 応用的動作能力:食事やトイレ、入浴などのセルフケア、日常生活に必要な動作の練習、金銭や貴重品、火の元の管理練習、コミュニケーション練習など
  • 社会的適応能力:字や計算の練習、パソコン操作、銀行や役所、公共交通機関の利用、絵画や音楽、各種ゲームなど趣味活動のサポート

人の生活は作業の連続です。作業療法士は、患者さんが自分らしく生き生きと生活を送れるように、さまざまな作業を通じて治療や指導、援助を行います。身体的な障害だけでなく、統合失調症や気分障害などの精神障害がある方への治療が行えるのも、作業療法士の特徴です。

作業療法士になるには?

作業療法士は、体と心のリハビリテーションに携わる重要な職業です。そのため、作業療法士になるにはまずは作業療法士国家試験に合格し、国家資格を取得しなければなりません。

では、具体的にどのように国家資格を取得すればよいのでしょうか。ここでは作業療法士国家資格の取得方法と作業療法士の適性についてご紹介します。

養成校で必要な単位を取得し国家試験に合格する必要がある

上述の通り、作業療法士は厚生労働大臣の認める国家資格のひとつです。その資格を取得するためには、作業療法士国家試験に合格することが必須であり、文部科学大臣指定もしくは厚生労働大臣指定の作業療法士養成校で必要な単位を取得し、卒業しなければいけません。

以下は、2020年に新たな条件が適用された作業療法士養成校のカリキュラムです。

  • 総単位数:101単位以上
  • 履修時間:3,150時間以上
  • 臨床実習:1単位あたり40時間以上45時間以内で、22単位以上

作業療法士としての専門知識と作業療法のスキルを習得するためには、このように多くの時間学ぶ必要があります。養成校では専門知識の基礎である解剖学や運動学、臨床医学などを学び、さらに専門性のある作業療法評学や中枢神経疾患作業法学、臨床実習などを学んでいきます。

外国で作業療法士の学校を卒業したり、免許を取得したりしている場合は、厚生労働大臣の認可により受験資格を得ることが可能です。

通常の場合は、すべてのカリキュラムを修了して卒業に必要な単位を取得したのち、国家試験の受験資格を得られます。国家試験を受験して合格基準点に達すると、作業療法士の免許取得となります。

作業療法士に向いている人材とは

人の役に立ちたいという思いやリハビリテーションに携わりたいという思いから、作業療法士を目指す方も多いですが、心身に障害などを抱える方々と関わっていく仕事ですので、適性を持っていることも仕事のしやすさに関わります。

では、作業療法士の仕事は、どのような方に向いているのでしょうか。以下は、作業療法士に必要な適性です。

  • コミュニケーション能力が高い
  • 根気強い
  • 他人の悩みに寄り添える
  • 柔軟な発想力
  • 観察力がある
  • 患者さんと一緒になって楽しめる遊び心

作業療法士が接する患者さんの多くは、これからの生活や将来について悩みを抱えています。そのような方々と接する際にとても大切なのが、根気強さや他人の悩みに寄り添う気持ちです。

患者さんが置かれた立場を理解しつつ、前向きにリハビリテーションに取り組めるように励ましたり、プログラムを組んだりしなければいけません。

また、リハビリテーションは患者さんだけでなく、周りのスタッフとの連携や情報の共有も非常に大切です。そういう部分でも、コミュニケーション能力や観察力は作業療法士に大切であるといえます。

作業療法士適性チェックリスト

企業では、応募者の性格や能力などの適性を確認し、その仕事に適しているかを客観的に判断するための適性チェックを行っているところもあります。作業療法士などの医療系や福祉系の職場でも適性チェックを導入しているところは多く、アルバイトやパートの採用でも行われることも。

実際に企業で行われる適性チェックには性格検査と能力検査の2種類がありますが、ここでは簡単に適性を診断するチェックリストをご紹介します。

□ ポジティブで物事を前向きに捉えられる

□ 困っている人は助けずにいられない

□ 1度はじめたことは最後までやり通せる

□ 新しい遊びを考え出すのが好き

□ 人と会話するのが好き

□ コツコツと何かを続けるのが好き

□ 専門分野以外のことにも興味がある

チェックリストの項目に多く当てはまる方は、作業療法士としての適性が高いといえます。当てはまる項目が少ない方は適性が低いといえますが、かといって作業療法士になれないというわけではありません。

適性も重要ですが、一番大切なことは作業療法士として困っている方を助けたいという気持ちです。適性が低かったとしても当てはまる項目を増やせるように意識して、改善していきましょう。

作業療法士になるための学校の種類と選び方

作業療法士になるための学校には、3つの種類があります。全国におよそ200校近くある養成校は、それぞれの学校によって通学する期間やカリキュラム、学費などが異なるため、まずはそれぞれの特徴を知ったうえで自分に合った学校を選ぶことが大切です。

ここでは、作業療法士になるための学校の種類別の特徴と選び方について詳しくご紹介します。

4年制大学

近年、作業療法士の需要が高まり、それに呼応するように20年ぶりとなるカリキュラムの大改正が行われました。作業療法士に専門的な医学とリハビリテーションの知識が求められる中で、患者さんの趣味や嗜好に合わせたプログラムを考案したり、世の中のさまざまな話題についていけることなども同じくらい重要なことです。

4年制大学では、作業療法士としての専門知識や技術だけでなく、一般教養や社会常識なども学ぶため、社会人として備えておきたい知識も得られます。いざ作業療法士として働きはじめて患者さんと関わる際、4年制大学で学んだ知識が役に立つでしょう。

まわり道と感じるかもしれませんが、現場で働きはじめる前にできるだけしっかりと基礎を築きたい方におすすめの進路だといえます。

また、授業の空きコマも多いので、その時間を勉強にあてたりアルバイトをしたりできるメリットも。学費は他の進路より1年分多くかかりますが、大学の学士という学位も与えられるため、大学院への進学も可能となります。

3年制短大

3年制短大は、4年制大学と同様に作業療法士としての専門知識だけでなく、一般教養などの科目がカリキュラムに含まれているのが特徴です。4年制大学より1年間通学する時間が少ないので、スケジュールはタイトになりますが、「一般教養も学びたいけれど、作業療法士として早く社会で働きたい」という方におすすめの進路です。

学校によって一般教養にも力を入れている、作業療法士としての知識を重視しているなど、重視する部分が異なるため、しっかりと学校による特徴を比較しなければいけません。

卒業時に短期大学士という学位が与えられるため、大学への編入学も可能となります。

専門学校

作業療法士になるためには、3年制もしくは4年制の専門学校で学ぶ選択肢もあります。

専門学校は、作業療法士として求められるニーズに応えるために、より現場に近い実践的教育を重視したカリキュラムを中心に、必要な知識と技術を学んでいくのが特徴です。大学のように一般教養科目を学ぶことはありませんが、1年次から作業療法士になるための勉強のみに集中できます。

夜間部を設置している専門学校も多いので、社会人で働きながら資格を取得したい方もたくさん通っています。

4年制の専門学校で学ぶ場合、国家試験対策に時間をかけられるので、試験に絶対一発で合格したい方も安心して学ぶことができるでしょう。3年制の専門学校を卒業した場合は専門士、4年制では高度専門士の称号を取得できます。

作業療法士になるための学校の選び方

養成校には3年間もしくは4年間通いますが、学ぶ年数に違いがあっても、作業療法士として必要な専門知識や技術に差が出ることはありません。

将来的にリハビリテーションの研究や後進の育成に携わりたい、じっくりと学ぶ時間が欲しい場合は大学や短期大学を、養成校を卒業後は即戦力として働きたい場合は専門学校を選ぶなど、自分がどのようにリハビリテーションと携わっていきたいかで学校を選ぶのもよいでしょう。

また、国家試験の合格率や就職先などから学校を選ぶのもひとつの手です。経営母体が病院である場合や、病院附属の学校である場合は、就職に困らなくて済むかもしれません。

まとめ

作業療法士の詳細と適性、学校の種類や選び方などについてご紹介しました。

作業療法士の養成校は、大学と短大、専門学校を合わせて全国に200校あります。作業療法士になるには、養成校で3年間以上専門的な知識と技術を学び、国家試験に合格しなければいけません。

ご紹介したように作業療法士の適性も大切ですが、自分はどういう作業療法士になりたいかをよく考えて、学校の種類を選ぶとよいでしょう。

作業療法士になりたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。