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探求授業とは?4つの過程とメリットデメリットを詳しく解説!

  • 学校関連情報

現代社会を生き抜くために必要な力を養う探求授業。

平成30年3月に改訂された高校学習指導要領で新たに盛り込まれた探求授業は、令和4年度より高校教育の中で本格的に実施されていくことが決定しています。

新たな学習指導要領になったことで一気に身近な存在になった探求授業ですが、その目的や重要性は多くの方がまだ理解されていません。

というわけで本記事では、探求授業の目的、過程、メリットデメリットをまとめて紹介していきます。探求授業に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。

探求授業とは


探求授業とは、先生に指定された問題を解決するのではなく自ら問いや課題を見つけ、情報収集や整理、他者との協同や議論を通して独自の答えを導き出すための学習方法です。

従来までの固有の知識やスキルを学ぶための教科学習とは異なり、自ら問いを探して解決への道を模索していくため、思考力・判断力・決断力・表現力・言語力を養うことができます

少子高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大、ICT技術やAIの技術革新など、今の生徒たちは将来的には激しく移り変わる社会の変化の中で生きていくことが容易に予測されます。

そうした環境下では、誰かに指示されるのを待つのではなく、自分で考えて自分で解決できる力を持っていなければいけません。つまり、自分なりの正解を導く力が必要なのです。

多くの企業では、新卒で入社する学生に対して以下の能力を有していることを求めています。

  • 主体性
  • 実行力
  • 課題を設定する力
  • 課題を解決する力

教科学習のような既存の枠組みに捉われない自由度の高い探求授業を通して、学生は自らの力で考えて行動する力が養われていきます。そして、それはこれからの激動の社会を生き抜くためには必要不可欠な力なのです。

探求授業の4つの過程


探求授業では学生は従来の授業のように決められた問題を解くのではなく、自らで問いを設定して解決していきます。探求授業は以下の4つの過程で構成されています。

  1. 課題の設定
  2. 情報の収集
  3. 整理・分析
  4. まとめ・表現

探求の過程はおよその流れであり、順序は前後する場合があります。主体は学生にあるため、順番の前後も自らの手で決めることが可能です。

以下の項目では、探求授業の4つの過程をひとつずつ詳しく解説していきます。

課題の設定

探求授業において最も重要な過程だといわれているのが「課題の設定」です。

自分自身で探求するべき課題を見つけなければいけませんが、多くの学生がまずこの過程で一回目の壁に阻まれます。闇雲に興味がない課題を適当に設定しても効果がありませんので、設定する際は以下の点に注意してみてください。

  • 自分の身近にある何となく気になっていた疑問
  • テーマを深堀りできそうな壮大な疑問
  • 答えが1つではない多様な解釈ができそうな疑問

上記のような疑問に設定すると調査や分析が進みやすいです。決めた課題は情報を収集して分析することになりますので、これまでの人生で全く疑問に感じてこなかったような課題は除外した方が良いです。自分が今まで少しでも疑問に感じたことがある課題であれば興味を持って調べることができます

また、探求学習推進協会の探究学習白書によると、「総合的な学習の時間」あるいは「総合的な探究の時間」の授業において、今までに取り上げたことのあるテーマは以下の通りです。

  1. 職業(54.1%)
  2. 国際理解(43.6%)
  3. 環境(35.7%)
  4. 福祉(32.8%)
  5. 伝統文化(29.7%)
  6. 勤労(29.5%)
  7. 情報(25.8%)
  8. 防災(21.3%)
  9. 町づくり(17.5%)
  10. 地域経済(17.5%)

たとえば1位にランクインした職業を課題にした場合、職業体験などの体験学習を通して自分自身に最も合っている職業を知ることができます。さらに、その職業に就くことでどのような社会貢献ができるかを学ぶことで深い知見を得られるでしょう。

「環境」を課題に設定すれば自然環境の現状を調べたうえで解決への取り組み方法を考えることができ、「伝統文化」であれば地域に根付いた伝統の歴史と文化を学習できます。

情報の収集

課題が決定した後は「情報の収集」をしていきます。

まずは、どのようなアプローチで情報を収集していくのかを考えてください。インターネットや書籍で調べるのか、実際に現地まで行き観察するのかなど、情報を集める手段はさまざまです。もちろん、ネットで調べて現地へも行くという手法を取ることも可能です。

情報収集の方法は複数でも構いません。学校の中には現地へ行き関係者へ話を聞きに行くことを推奨している場合もありますが、それも自分自身の裁量で決めることができます。

多くの情報を得ることができれば後の整理と分析で取捨選択ができるため、偏った媒体から知識を得るのではなく、各収集手段を駆使して多くの情報を収集することを意識してください。

ちなみに、周りの大人に取材する、現場で働く関係者へ話を聞くという行動は、自身のコミュニケーション能力を高める効果があります。

社会に出れば強く痛感することではありますが、デジタル社会となった現代でもコミュニケーション能力は不可欠です。社会性を養うという意味においても、ネットや本での情報収集だけに偏るのではなく、意識的に人へ話を聞くという収集方法も取り入れましょう。

整理・分析

収集した情報を「整理・分析」することで、課題を解決するための策を検討していきます

ここで重要になるのが思考力を養うという点。さまざまなツールを活用しながら収集した情報を分析することで、構造化と可視化が実現できます。比較・分類・序列化を行うことで、課題に対しての因果関係を導き出し、解決への道を思考しなければいけません。

整理と分析のプロセスが自分の考えを可視化していく探求授業の醍醐味ともいえるため、時間をかけて収集した情報を分析してください。より自分らしい答えを導き出すためには多くの情報を整理する必要がありますので、どれだけ情報を収集できるかが重要になります。

まとめ・表現

課題を解決するための情報をまとめて表現することで探求授業は完了されます。

人間の脳は使わない記憶は削除するようにできています。つまり、探求授業でインプットした知識はアウトプットして使わなければ頭に定着することはありません。

知識を定着させるためには、学んだ知識を脳から出力することが極めて重要なのです。探求授業では、学んだ知識を表現することでアウトプットを行っています。

これまで収集してきた情報を整理して分析した結果、このような結論が出たということを自ら資料を作成して構成したうえで発表します。

そして、これまでの活用内容や資料を振り返りながら、良かった点や悪かった点を検証することで次回の活動に向けた改善点を見つけることができます。

探求授業のメリットとデメリット


最後に、適切な探求授業を実施することでどのようなメリットデメリットがあるのかを紹介していきます。それぞれを理解したうえで学習に取り組みましょう。

探求授業には以下のようなメリットがあります。

  • 自分で調べた知識なので定着率が高い
  • 自分で行動するためやる気や主体性が上がる
  • 将来に向けた選択肢を増やすことができる
  • 他者とのコミュニケーションを通して社会性が上がる
  • 情報を収集して整理する力を身に付けられる
  • 自ら進んで学ぶという姿勢が形成されていく
  • 探求授業は自分で考え、行動し、結論を出す学習です。

    自分が主役になる学習なので、主体性を養い自ら進んで勉強するという力が培われます。また、自分で調べてアウトプットする学習なので知識の定着率が高いです。

    他にも、情報を収集する過程で他者とコミュニケーションを図ることで社会性が育ちます。学校生活は良くも悪くも学校という限られた範囲の中でしか生活をしませんので、普段の授業の中で生徒や先生以外の方とコミュニケーションを取る機会は限られています。

    しかし、社会に出ればさまざまな人と関わりコミュニケーションを取るのは普通です。社会に出てからコミュニケーションを図ることが困難にならないようにするためには、学生時代から多くの方と話す機会を設けておくようにするのがベストです。

    また、人から一方的に与えられる学びよりも、自分で考えて得た学びの方が深い学びとなりますので、深く知識として定着していきます。

    探求授業で得た知識は将来の自分を考えた時に職業選択の幅を広がらせる効果もありますので、未来の自分のための学習であるともいえるでしょう。

    一方で、興味があるテーマを見つけるのが困難であるというデメリットもあります。

    基本的には自分が興味があるテーマを探すのがベストですが、何に興味があり調べられるのかを検討しなければいけませんので、まず探求授業の第一歩となる「課題の決定」で困窮する学生も多く見受けられることが予想されます。

    探求授業は先生の助けを得ることが基本的にはできません。学生自身の主体性を育てる授業になりますので、人によっては長い時間がかかってしまう可能性もあります。

    まとめ

    探求授業の基本概要、授業の過程、メリットデメリットを紹介していきました。

    学生の主体性を育てることができる探求授業では、自身で課題を決めたうえで解決するための情報を収集していきます。情報を収集するための方法、分析、結果、アウトプット資料もすべて自分で作成することになりますので、自分で考えて行動しなければいけません。

    小学校ではすでに導入されていますが、高校でも2022年1月から本格的にスタートされます。

    自分の興味があることを調べることで将来にも意味を見出すことができる探求授業。養われる知識や目的を理解したうえで、探求授業へ取り組むようにしてください。