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廃校を活用する3つのメリットと活用事例を紹介

  • 学校関連情報
廃校 活用

日本では高齢化が進み若年人口が減少し続けています。地域によってその影響はさまざまで、とくに影響を及ぼしているのは廃校の増加です。

人口の減少、高齢化に向けて政府では「まち・ひと・しごと創生法」などを中心に、さまざまな取り組みを掲げています。

しかし、年間約500校が廃校にいたっているという現状を考えると、自治体にとって廃校を有効活用することは大きな課題となっています。

「まち・ひと・しごと創生法」の基本方針の一つである「東京一極集中の歯止め」を実現するためにも、廃校を利用し地域創生をはかることは重要な取り組みといえます。

この記事では、廃校活用の現状、廃校を活用するメリットをお伝えしたあと、全国の廃校活用事例をご紹介します。

廃校活用の現状

駅舎

廃校は、地域の児童生徒数の減少によって、学校同士の統合が行われたり、廃止されたりすることによって、学校として使われなくなった際に生じます。

廃校になった学校を有効活用することは、地域を活性化させるためにも非常に重要な施策であるといえます。

まずは、廃校活用の現状についてご紹介します。

活用されているものが74.5%

文部科学省が平成30年に行った調査によると、廃校発生数は以下のようになっています。

  • 平成14年度から平成29年度に発生した廃校の数…7,583校
  • 平成28年度…406校
  • 平成29年度…358校

このうち、平成30年の時点で施設が現存している廃校は6,580校に対して、活用されているものは4,905校(74.5%)、活用されていないものは1,675校(25.5%)となっています。

活用されていない廃校のうち、活用の用途が決まっていないものは1,295校あり、用途が決まらない理由としては、建物の老朽化や地域からの要望がないことなどが挙げられています。

学校施設は、地域の住民にとって最も身近な公共施設となっているため、廃校後も地域のコミュニティの中心となるような施設であるべきと考えられています。

現在廃校は、公共施設、体験交流施設、老人福祉施設などのさまざまな用途で活用されていて、民間事業者との連携によってオフィスや工場といった活用事例も増えてきています。

「みんなの廃校」プロジェクトとは

前述したように、廃校になった学校で用途が決まっていないものは1,295校あるとされています。

この、用途が決まっていない廃校に対して、活用が検討されているものの活用方法がわからないなどの問題を解決するために立ち上げられたのが「みんなの廃校」プロジェクトです。

未活用の廃校施設の情報を集約し一覧にして公表することで、より多くの方々に情報を提供し、活用したいと考えている方と、廃校施設の情報をマッチングするという取り組みです。

2021年3月現在、イベントなどは終了していますが、毎年「みんなの廃校プロジェクト」によるマッチングイベントが開催されているので、興味のある方は文部科学省のホームページを確認してみましょう。

廃校を活用するメリット

廃校

廃校の活用には国土交通省や農林水産省も関心を寄せていて、廃校を利用して地域への定住を促進し、農山村が抱える課題解決に向けて、地域創生への取り組みの一つとして、活用しはじめています。

民間の企業が廃校を活用するとなった際には、どんなメリットがあるのでしょうか。

ここからは、廃校を活用するメリットをご紹介します。

既存物件を使用できる

廃校は既存の建物を使用することになるので、初期費用をかけずに事業に早期着手できます。

学校は教室ごとに仕切りがあるのも特徴で、その仕切りをうまく利用することで改修費用を抑えることもできます。

たとえば、静岡県伊豆市で廃校を利用して作られた手作りみそ工場は、さまざまな教室の仕切りをそのまま上手に活用したことで、改修費用は400万円で済んだといいます。

さらに、廃校を活用すると使える国庫補助制度があるので、国の補助制度を使って改修を行うことも可能です。

話題性による高い宣伝効果

校舎

社会問題にもなっている廃校を活用した施設は、メディアからも注目され、話題となるため、高い宣伝効果が期待できます。

たとえば、高知県の東部にある室戸市では、10年以上前に廃校になった椎名小学校が、2018年に「むろと廃校水族館」として生まれ変わりました。

廃校という名前を入れたキャッチーな名前の水族館で、25mプールや跳び箱などを利用した、廃校ならではの斬新な展示方法が魅力的です。

25mプールでは、悠々と泳ぐサメの姿を見ることができ、教室や廊下のいたるところで、50種類、1000匹以上の魚が展示されています。

オープン半年後の10月には、来館者が10万人を突破するなど、話題性によって集客に成功した例といえます。

地域に密着した施設

学校という場所は、そもそも地域住民に愛され、見守られ、地域の中心となってきた場所です。

地域の方々も、学校に対する思い入れは強く、自身が通っていた、子どもや孫が通っていたなど、思い出深い場所でもあります。

地域住民にとって特別な場所である学校という場所を利用して、地域住民と一緒になって地域の課題に取り組むことは、地域に貢献することにもつながります。

たとえば、無印良品を運営する良品計画では、2017年に千葉県大多喜町の旧老川小学校を、コワーキングスペースとして活用しはじめました。

地域の方々が利用できるコワーキングスペースを運営しながら、地域に根差した事業が産まれる場所として、地域課題を学ぶイベントやワークショップを企画しているといいます。

地域の方々だけではなく、遠方から休暇を兼ねて利用する方もいるため、地域住民との交流の場としても利用されています。

廃校活用事例

廃校活用事例

廃校を活用することは、民間企業にとっても地方自治体にとってもプラスとなることが多く、地方創生を推進することにも繋がります。

ここからは、廃校の活用事例をご紹介します。

日本保健医療大学・新学科設立(埼玉県幸手市)

埼玉県幸手市で日本保健医療大学を運営している学校法人共済学園では、2013年に閉校した旧県立幸手高校を購入し、新しい学科を設け活用しています。

もともと旧幸手東小学校の跡地を活用して開校された日本保健医療大学は、4年制の看護学科を設置している大学で、もともとあったキャンパスからも近い旧幸手高の新しいキャンパスに新学科を設立しました。

キャンパスが増えた今では、2017年に理学療法学科を開設し、実践に活かすための最新の医療現場に準じた教育環境が完備された大学として、幸手市に貢献しています。

Fukuoka Growth Next(福岡県福岡市)

福岡県が実施した「福岡市スタートアップ支援運営事業」に応募した、福岡地所株式会社、さくらインターネット株式会社、GMOペパボ株式会社が、旧大名小学校を利用し、官民共同型スタートアップ支援施設を2017年にはじめ、2019年5月にリニューアルオープンさせました。

Fukuoka Growth Next(FGN)には、起業家を対象としたインキュベーション施設、コワーキングスペース、起業についての相談ができるスタートアップカフェなどが集結しています。

2年で入居企業のうちの31社対して、総額82億円ほどの資金調達が行われるなど、福岡を中心として九州のスタートアップを牽引しています。

さらにFukuoka Growth Next(FGN)では、独自のさまざまなプログラムを用意し、入居者に対しての指導、サポートやエンジニアなどの育成プロジェクト、アクセラレータープログラムなどを展開して福岡市をスタートアップが集積する場所にしようとしています。

のじまスコーラ(兵庫県淡路市)

2010年に閉校した旧野島小学校を改装して作られたのじまスコーラは、地域活性化のシンボルとして、観光、6次産業化のモデル施設、地域住民の交流の場に生まれ変わりました。

スコーラ(scuola)はイタリア語で学校を意味していて、年間15万人以上の方が訪れる施設として注目されています。

のじまスコーラのなかには、マルシェ、ベーカリー、カフェ、レストラン、BBQテラス、キッズスペースなどが設けられていて、観光名所としても地域の方が集う場所としても活用されています。

校庭の端には、のじま動物園としてアルパカやヤギが飼育されていて、エサをあげながら触れ合ったり、イベントが開催されたりと、子どもも大人も楽しめる施設となっています。

秋山郷結東温泉 かたくりの宿(新潟県中魚沼郡)

かたくりの宿は、108年の歴史がある旧津南町立中津峡小学校を、1993年に宿泊施設に生まれ変わらせた場所です。

秋山郷は秘境といわれるほどの山深い地域で、地域の住民から廃校になった学校を残し、再利用してほしいという声も多かったことから、宿泊施設として生まれ変わることになりました。

部屋数は7部屋と小さな宿ですが、宿では地元の山菜や野菜をふんだんに使った栄養バランスのとれた料理を味わえます。

元校長室だった場所にあるお風呂は、国内でわずか4%といわれる希少な良質の芒硝泉のお湯を楽しめます。

太陽の森ディマシオ美術館(北海道新冠町)

太陽の森ディマシオ美術館は、廃校になった旧太陽小学校を利用して、地域密着型の美術館として2010年にオープンしました。

北海道日高の雄大な山々や牧場に囲まれた大自然の中にある美術館では、自然とアートの融合、自然との共生をコンセプトにした幻想的な雰囲気をたのしめます。

とくに見ごたえがあるのが、高さ9m、幅27mに及ぶ世界最大の油彩画です。1997年にチュニジア政府の要請でカルタゴの大聖堂で初公開され、世界に衝撃を与えた油彩画で、ディマシオ1人の手で3年かけて書かれたといわれている作品です。

旧太陽小学校は、補修の必要がほぼなかったほどの立派な造りで、体育館にピッタリ収まっているディマシオの油彩画が魅力的です。

まとめ

廃校活用の現状、廃校を活用するメリット、全国の廃校活用事例をご紹介しましたが、参考になりましたか?

廃校は活用が進んでいるとはいえ、まだまだ活用方法すら決まっていないものもあります。

地域の住民の想いが詰まった学校を、あらたに生まれ変わらせる取り組みは世間からも注目され、廃校を利用した施設は集客力もあるのが特徴です。

記事内でもご紹介した「日本保健医療大学」は、廃校を活用した施設であり、地域に貢献することを重要な活動と考えて取り組んでいます。

幸手の市民活動は「幸手モデル」としてメディアで紹介されていることから、広く知られている活動です。

「日本保健医療大学」では、「未来につなぐ幸せの手~つたえよう、つながろう、世代と世代~」を基本理念とした活動を幅広く展開しています。

幸手市挨拶活動、小学校での心肺蘇生授業、幸手市民祭りでの血圧測定等の実施など、地域の方と触れ合いながら過ごす学生生活は、看護師や理学療法士を目指す方にとってかけがえのない体験となり、今後の人生に活かされていきます。

廃校を利用した大学である「日本保健医療大学」に興味があるという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。